ねじれの位置

東京在住アビスパサポーターの活動記録

2018年7月7日アウェイ京都サンガ戦

バスツアーのしおりに寄稿したコラムです。

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2018年7月7日。私は賭けに負けた。西日本を襲う豪雨。西京極スタジアム隣の桂川は危険水位に達し、京都沿線の電車は軒並み運休。アビスパ福岡のアウェイ京都戦は当然延期だろうと誰もが考えていた。しかしながら意外なことに、サンガからの発表は「前日の段階では開催予定」であった。試合当日の13時に最終的な判断をするという注釈付きで。京都行きの切符と宿を既に手配していた私は、サンガのツイートに続々と増えるリプライを読みながらキャンセルすべきか悩んだ。「この状況で開催するなんてありえない」「人命優先で延期にすべき」「何かあってからでは遅いんですよ」

 それでも開催される方に賭けて私は京都に向かうことを決めた。雨脚は弱まりつつあったし、現時点で開催見込みなのに行かない訳にはいかない。そして何より、山陽道の通行止めで九州から来られない大勢のサポーターの分まで応援する使命を感じたから。関東在住サポータなどというものはアウェイに行き過ぎて逆境が大好物な性分なのである。

 結果は皆様ご存知の通り、当日13時に一旦開催が発表されたものの14時前に一転延期が決定。新幹線内でぬか喜びした後、優雅に京野菜ご膳を楽しんでいたところを奈落の底に突き落とされた。サッカーを観に来たのにサッカーを観ずに帰る、初めての経験であった。

 切り替え切り替え。失点後のチームに掛ける声を自分に言い聞かせる。このまま帰るなんてやってられねーと思った私は関東から遠征してきたサポーターを誘い、京都在住のサポーターを誘い、twitterで知らないサポーターを誘い、サンガに裏切られた者たちの会を開いて楽しく愚痴り合った。転んでもただでは起きない。

 こういう時に良かったと思うのは、仲間がいることである。アビスパを応援し始めてから最初の5年間は一人で観戦していた。サークルノリみたいなものが大嫌いで、スタジアムでわいわいやっている人達を見るにつけ疎ましく感じていた。しかし、関東サポーターのバスツアーに参加したことや、年を取って人嫌いが治ったことで知り合いのサポーターが増えていった。そうすると、勝った時の喜びを分かち合い、負けた時の悔しさを分かち合い、勝ち点を得るどころか逸することすらできなかった時の虚しさを愚痴りあい(←new!)、試合だけではない楽しさが沢山あることに気付いた。試合結果がどうであれ楽しめるというのは本当に大きいことである。アビスパのような強豪ではないクラブを応援するともなれば尚更だ。

 これから新しくバスツアーに参加してくれる方々には、この「試合結果がどうであれ楽しめる」という体験を是非とも伝えていきたい。数年前の自分のように、バスツアーに参加することでアビスパをより好きになれたという人が一人でも増えてくれたら幸いである。